自らを律する(立するじゃないんだ)
にんです.
こんにちは,こんばんは.
本日はこちらを読了いたしました.
学生を自己調整学習者に育てる~アクティブラーニングのその先へ~
著: L・Bニルソン
訳: 美馬のゆり,伊達崇達
出版社: 北大路書房
発売日: 2017/07/14
メディア: 単行本
自己調整学習とはアメリカの教育心理学者であるバリー・J・ジマーマンを中心に提唱されている概念です.これは動機付けやメタ認知などの様々なプロセスを自ら見つめてコントロールし,学習を主体的に進めることです.昨今強調されている「生涯学習」のためにはこの自己調整は欠かせないものになっています.
自己調整ができる熟練した学習者は,学んでいる内容に焦点を当てるだけでなく自分を取り巻く感情や環境などを包括した学習状況を自ら改善していきます.それにより内的に動機付けがなされ,自らのために学習を進めていくことが可能になります.
ではこのようなことができる学習者を育てるにはどうしたらよいか,これを提案されているのが本書です.
スクローさん(Schraw, G. , 1998)とジマーマンさん(Zimmerman, B. J. , 1998)はそれぞれ自己調整学習の3つの段階を提案しました.
(スクロー / ジマーマン)
1.計画 / 予見
2.モニタリング / 遂行・意志コントロール
3.評価 / 自己省察
2人とも類似したモデルです.
本書では
・コース開始前に「このコースでA評価を取るにはどうしたらよいか」を自分で考えて記しておくこと.
・小テストなどはフィードバックをなるべく早く与え,誤答を分析し記録すること.
・コース終了後,このコースを次に受ける後輩に向けてアドバイスの手紙を書くこと
などがあげられていました.
基本的に自分自身を見つめなおし記しておく「ポートフォリオ」のような活動を推奨しているように感じました.これらの活動にとられる時間を厭わないことが重要であるとも強調されていました.
実は私の大学にもe-portfolio的なのが存在しています.しかしこれはほとんどの学生には利用されていないといいます.この原因はずばり「授業としてその活動が組み込まれていないから」だと思います.
本書では実際の大学のあるコースでこれら(実際にはもっとあります)の活動を授業の一環として導入しています.そのため学習者はそれらの活動を授業中に促され,身に着けていくことができます.
従来では講義を受けて,たまの小テストを受けて最後の期末テストやレポートで評価を得るという流れでした.しかしここではそのような総括的評価に限らず,それぞれの段階で自らを見つめなおす形成的評価を導入しています.つまり期末テストでいい点を取ることが目標ではないのです.あくまで1要素です.
なんならテストの問題を自分たちで作成をしています.教員に採用されるように適切な問題の作り方を積極的に学びます.問いを自分たちで作ることが学習につながることに着目しています.
結果だけでなくプロセスを重視する考え方ですね.
評価に関しては非常に考え物ですね.1回の期末テストのみで評価されるのは確かに重圧もかかります.この自己調整学習において感情も一つの要素ですので,この「不安感」は動機付けにもいい影響は与えないでしょう.
以前別の本でも評価方法に幅を持たせている例が紹介されていました.基本的に評価を得る方法を学生に任せるもので,レポート・プレゼンテーション・用意されたwebテストなど各自で選んだ方略で得た知識を「証明」することが推奨されていました.
特に小学生などの子どもたちでは,このように自分が持っている,または新しく得た知識について周りの人に好きな方法で伝えることができるのは学習が少し楽しいものになる気がします.
本書は「学生」という言葉を使っていることからも大学生などの高等教育を受ける人を対象にしていると思われますが,これを基盤に小学生の児童などにも応用できるのではないかと考えています.「学び方を学ぶ」ことは早いに越したことはないのではないでしょうか.自律した子供たちを育てるために,
"さよならハウス、さよなら大好きだった私たちの家、さよなら、ママ..."
もっと募集中です.
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